被害届を出された

1. 被害届とは?

被害届とは、被害者等が警察に対して「このような被害を受けた」と申告する書類であり、被害日時、場所、被害金品等を記載して被害の概要を示すものです。
犯罪捜査規範61条1項によれば、「警察官は、犯罪による被害の届出をする者があったときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。」とされていますので、被害者は、どこの警察署であっても被害届を提出すことができ、警察署はこれを受理します。
被害届が提出されると、警察は捜査を開始し、犯罪の有無や加害者の特定を進めます。被害届の提出自体は刑事手続きの始まりにすぎませんが、内容によっては刑事事件として本格的な捜査が行われることになります。

2. 被害届を出されたらどうなるのか?

被害届が警察に提出されると、以下のような流れで手続きが進みます。

(1) 警察の捜査・逮捕

警察は被害届の内容をもとに、事実関係を確認するために捜査を行います。
具体的には、犯行現場の実況見分や、遺留品等の証拠物の領置、犯人特定のための指紋や毛髪、体液等の鑑定嘱託、犯人を目撃した人物に対する面割り捜査などが行われます。
これらの捜査によって、警察は、犯人と疑うに足りる相当の理由がある人(被疑者)の特定を行っていくことになります。
そして、警察において被疑者と判断した場合、被疑者に逃亡や罪証隠滅のおそれがあると認められる限り、警察からの裁判所に対する逮捕状請求によって逮捕状が発付され、逮捕されることとなります。

(2)取調べ

警察による捜査段階においては、取調べを求められることがあります。
取調べに対して必ず回答しなければならないわけではありませんが、逮捕・勾留れされている場合、取調受忍義務がありますので(刑訴法198条1項)、取調室への出頭・滞留義務が生じることとなる結果、警察官からの追求を受け続けなければならなくなります。
このため、逮捕後の取調べは非常に過酷なものとなります。
なお、逮捕もされていない段階では、取調受忍義務がありませんので、取調室への出頭そのものを拒絶できます。

(3) 起訴・不起訴の判断(刑事手続きに進むか)

警察や検察による捜査の結果、検察官が事件として起訴すべきと判断した場合には、起訴されることとなります。
この際、検察官が、100万円以下の罰金または科料による処分が相当であると判断した場合には略式起訴が行われる場合があります。
略式起訴の場合、書面審査のみによって裁判は終了します。
これに対し、証拠が不足している場合や事件性が低いと判断された場合は、不起訴や事件として取り扱われないこともあります。

3. 被害届を出された場合の対処法

(1) 冷静に対応する

まず何より、感情的にならず、冷静に対応することが重要です。
被害届を出されたことに怖くなって逃げようとしたりしてはいけません。
逃走を図った場合、本当は罪を犯していなくとも、犯罪の嫌疑がある人が逃走を図ったということで逮捕の要件を満たしてしまいます。
逮捕されると、突然、社会から切り離され、仕事や人間関係に多大な影響を与えますので、できる限り、逮捕される事情を作らないように振る舞うことが大切です。
また、警察官や検察官からの取調べに対しても感情的にならずに応対することが重要です。
取調べを受けたからといって必ず起訴されるとは限りません。双方の話を聞いて事件性なしと判断する可能性もありますし、被害対応が進んでいるので不起訴処分とするという可能性もあるからです。

(2) 事実関係を整理する

被害届を出された場合、どのような理由で出されたのかを把握し、自分がどのような行動を取ったのか整理することが重要です。誤解や事実と異なる申告がある場合には、その点を明確にする準備をしておきましょう。
事前に事実関係を整理しておけば、取調べに際して警察官や検察官からの追求に対し、的確に返答することで、被害者の届出内容と客観的な事実との矛盾点を示すことが出来る場合もあるからです。
他にも、記憶は時間の経過とともに劣化していくものですので、事実関係の整理をしておくことにより、後日の取調べに対しても、曖昧な回答に終始しなくてよくなったり、質問に誘導されて事実と異なる回答をするリスクを減らすことが出来るからです。

(3) 弁護士に相談する

被害届が出された段階で、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は、警察の対応や今後の手続きについて適切なアドバイスを提供し、あなたの権利を守るための対応を取ることができます。

4.被害届を出された場合の弁護士に依頼するメリット

(1) 適切なアドバイスが受けられる

被害届が出されただけでは、国選弁護人が選任されるわけではありません。
国選弁護人が選任されるタイミングは勾留が決定されてからです。
このため、被害届が提出された直後は、何もしなければ一人で捜査に対応することが求められます。
しかし、刑事手続きのルールは複雑であり、適切な対応を取らないと不利な結果を招くこともあります。
例えば、取調べの際に、自己に不利な発言をしてしまうと、後日の裁判に際し、取調べの際の発言は事実ではないと主張しても、被告人の発言が信用出来ない証拠として取調べの際の発言が利用されてしまう可能性があります。
このほかにも、黙秘の解除のタイミングであったり、不当な取調べに対する対応など、様々な面で慎重な対応が求められます。
このため、自ら弁護士に相談することにより、事前にアドバイスを得て、適切な対応策を把握しておくことが重要なのです。

(2) 被害者との示談交渉

被害届を出された場合、被害者と示談を成立させることで、事件が大きくなるのを防ぐことができる場合があります。特に、被害者が被害届を取り下げる意思がある場合、示談によって不起訴となる可能性が高まります。ただし、示談交渉には、適正な示談金の交渉や、示談書の作成など専門的な知識が必要であり、弁護士を通じて進めるのが安全です。

示談の進め方について詳しく知りたい方はこちらの「被害者と示談したい」をご覧ください。

5. まとめ

被害届を出された場合、冷静に対応し、事実関係を整理することが重要です。警察の対応に適切に対応し、示談交渉を進めることで、事態を早期に解決できる場合もあります。
しかし、刑事事件の手続きは複雑であり、一人で対応するには限界があります。できるだけ早い段階で弁護士に相談し、適切な対応を取ることが、最良の解決につながります。
もし被害届を出された場合、すぐに弁護士にご相談ください。弁護士があなたの立場を守り、最適な解決策を提案いたします。

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