1 はじめに
不同意わいせつ罪や不同意性交罪に問われた場合、刑事手続きが進行し、重い刑罰が科される可能性があります。しかし、適切な弁護活動を行うことで、刑の軽減や不起訴処分を目指すことが可能です。
本記事では、これらの犯罪の基本的な内容と、被疑者に対する弁護方針について解説します。
2 不同意わいせつ罪とは
⑴ 不同意わいせつ罪(刑法176条)とは
不同意わいせつ罪は、相手の同意がない状態でわいせつ行為をすることを処罰する規定です。
以前は強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪として処罰されており、強制わいせつ罪は暴行・脅迫を手段とするわいせつ行為が、準強制わいせつ罪は心神喪失・抗拒不能状態でのわいせつ行為が処罰の対象となっていました。
しかし、2023年7月13日より刑法が改正され、強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪は不同意わいせつ罪となり、暴行・脅迫等の行為に限られず、相手の同意がない状況でのわいせつ行為を広く処罰することになりました。
⑵ 不同意わいせつ罪の類型
① 相手が同意しないという意思を表明できない状況でのわいせつ行為(刑法176条1項)
まず、次の8つの行為または事由その他これらに類する行為または事由により、相手が同意することが困難な状況でわいせつ行為をすることを不同意わいせつと定めています。
【刑法176条1項】 一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。 二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること 三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること 四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさえること又はその状態にあること 五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと 六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること 七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること 八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれに憂慮していること |
②相手の勘違いに乗じたわいせつ行為(刑法176条2項)
行為がわいせつなものではないと誤信させ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、またはそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつ行為をした者も、不同意わいせつ罪に問われます。
具体的には、医師が医療行為と偽ってわいせつな行為をした場合などがこれに当たります。
③16歳未満の者に対するわいせつ行為
16歳未満の者に対してわいせつな行為をした者も、不同意わいせつ罪に問われます。
ただし、13歳~16歳未満の者に対する行為であれば、5歳以上年上の者による行為に限り、不同意わいせつ罪とされます。
⑶ 不同意わいせつ罪の罰則
不同意わいせつ罪の罰則は6ヶ月~10年の懲役刑(2025年6月以降は拘禁刑)となります。罰金刑はないため、有罪となった場合には執行猶予がつかない限り、刑務所に収監されることになります。
3 不同意性交等罪とは
⑴ 不同意性交等罪(刑法177条)とは
不同意性交等罪とは、相手の同意なき性交等を処罰する犯罪です。
以前は、暴行・脅迫を手段とする性交等のみ強制性交等罪で処罰し、相手が心神喪失または抗拒不能に陥っている状態で性交等した場合に準強制性交等罪で処罰していました。
2023年7月13日以降は、これらの行為に限らず、同意なく性交等をした場合に広く不同意性交等罪で処罰されることになりました。
⑵ 「性交等」とは
不同意性交等罪の「性交等」とは、刑法177条1項より、以下の4つの行為を指すとされています。
① 性交
② 肛門性交
③ 口腔性交
④ 膣または肛門に陰茎以外の身体の一部や物を挿入する行為
そして、婚姻関係の有無にかかわらず、不同意わいせつ罪に規定されているのと同様の方法で、相手の同意なく性交等に及んだ場合には、不同意性交等罪に問われることになります。
⑶ 不同意性交等罪の罰則
不同意性交等罪の罰則は、5~20年の懲役刑(2025年6月以降は拘禁刑)とされています。不同意わいせつ罪と同様、不同意性交等罪にも罰金刑がないため、有罪となった場合には執行猶予がつかない限り刑務所に収監されることになります。
4 不同意わいせつ等致死傷罪・不同意性交等致死傷罪とは
不同意わいせつ罪を犯して被害者を負傷させた場合は不同意わいせつ致傷罪が、被害者を死亡させた場合は、不同意わいせつ致死罪が成立します。この場合の刑罰は、無期懲役または懲役3~20年となります。
また、不同意性交等罪を犯して被害者を負傷させた場合は不同意性交等致傷罪が、被害者を死亡させた場合は、不同意性交等致死罪が成立します。この場合の刑罰は、無期懲役または懲役6~20年となります。
5 不同意わいせつ罪または不同意性交等罪に問われた場合の弁護方針
不同意わいせつ罪または不同意性交等罪に問われた場合、起訴されて有罪となると、上記の通り長期間刑務所に収監されることになります。
そのため、早期に弁護士に依頼し、不起訴や執行猶予獲得に向けた活動をする必要があります。
不同意わいせつ罪や不同意性交等罪は被害者の自由な意思決定を保護する犯罪ですので、被害者と示談をし、示談書に「許す」や「処罰を求めない」といった宥恕文言が記載されていれば、不起訴となる可能性があります。また、起訴されたとしても、執行猶予となり可能性が高くなります。
また、相手の同意のもとで行為をしていた場合でも、後々、相手から「同意がなかった。」として訴えられるケースもあります。そのような場合には、客観的な証拠にもとづいて、相手の同意があったことを証明し、捜査機関や裁判官に対して示す必要があります。
6 さいごに
不同意わいせつ罪、不同意性交等罪に問われた場合、有罪となれば重い刑罰が科されることになります。もっとも、早期に弁護士に依頼することで、不起訴処分や執行猶予判決を得る可能性もあります。
弊所では、刑事弁護の経験が豊富な弁護士が、適切かつ迅速に対応いたします。
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