薬物犯罪とは?—薬物の種類別に見る犯罪内容と刑事事件手続きの流れ

薬物犯罪は、法によって禁止されている薬物の所持や使用、製造、販売等を行う犯罪行為です。

薬物はその種類や作用に応じて分類され、それぞれに対応する法律が定められています。薬物犯罪は社会に与える悪影響が大きいため、厳しい刑罰が科される傾向にのが一般的です。

この記事では、薬物の種類ごとの犯罪類型について解説し、薬物犯罪に関わる刑事事件手続きの流れや弁護人の役割や、弁護士に依頼することで得られるメリットについても説明します。また、具体的な事例を通じて、薬物犯罪の処理における重要なポイントも紹介します。

1 薬物犯罪の種類

薬物犯罪には、薬物の使用や所持、製造、販売などの行為があり、それぞれの薬物の種類に応じて法律で規制されています。以下に、代表的な薬物ごとの犯罪について解説します。

 

1.1. 覚醒剤

覚醒剤は、日本において最も厳しく取り締まられている薬物の一つです。

覚醒剤取締法に基づき、覚醒剤の所持、使用、製造、譲渡・譲受輸入・輸出といった行為が厳しく規制されています。覚醒剤は依存性が高く、精神的・身体的に大きな悪影響を与えることから、覚醒剤取締法違反は非常に重い犯罪とされています。

覚醒剤の所持や使用で摘発された場合、初犯であっても懲役刑が科されることが多く、執行猶予付きの判決が言い渡されることもありますが、再犯の場合は実刑の可能性が高くなります。

 

1.2. 大麻

大麻取締法に基づき、大麻の所持、栽培、譲渡・譲受、研究のための使用、輸入・輸出といった行為が禁止されています。

そして、令和6年12月12日には、大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律の一部が施行され、大麻の施用が禁止されることになります。近年、医療用大麻に関する議論が行われ、同法の一部施行により、大麻草から製造された医薬品の施用等が可能となる一方で、大麻等の施用罪の適用等に係る規定も整備されることになりました。

大麻を所持していた場合も、覚醒剤と同様に、懲役刑が科される可能性が高いといえます。

 

1.3. MDMA(エクスタシー)

MDMAは、主に「パーティドラッグ」などとして知られ、依存性と中毒性が強い薬物です。

麻薬及び向精神薬取締法に基づいて規制されており、使用(施用)や所持、譲渡・譲受、輸入・輸出といった行為に対して厳しい刑罰が科されます。

MDMAには、体温を上昇させ、血圧をあげる作用もあり、特に若者を中心にパーティやイベントでの使用が問題視されています。

MDMAを摂取してダンスを長時間続けたりすると、熱中症症状になりやすく、アルコールを併用すると、危険性はさらに高くなります。

また、その対処として水を飲みすぎると低ナトリウム血症を起こす危険もあります。

MDMAの所持や使用で逮捕された場合、初犯でも懲役刑が科される可能性が高く、再犯となればより厳しい刑罰が科されます。

 

1.4. コカイン、ヘロイン

コカインやヘロインは、麻薬及び向精神薬取締法に基づいて厳しく規制されています。

これらの薬物は、精神的・身体的依存を引き起こし、社会に対して大きな悪影響を与えるとされています。コカインやヘロインを所持したり、使用(施用)したりした場合、重い懲役刑や罰金刑が科されることが一般的です。

ヘロインなどの使用も、重罪とされており、初犯であっても実刑判決を受けることがあります。

 

2 薬物犯罪の刑事事件手続きの流れ

薬物犯罪が発覚すると、警察によって捜査が開始され、刑事事件として処理されます。以下に、薬物犯罪に関する刑事事件手続きの流れを説明します。

 

2.1. 逮捕と取り調べ

薬物犯罪で逮捕される場合、警察は薬物の所持や使用等の疑いで被疑者を逮捕し、身柄を拘束します。

逮捕後は、警察署で取り調べが行われます。取り調べの際に、どのように対応するかが、その後の手続きに大きく影響します。

特に、供述調書の内容が裁判での重要な証拠となるため、取り調べにおける発言には注意が必要です。弁護人のアドバイスを受けて、適切な対応を取ることが望まれます。

 

2.2. 検察官による捜査と起訴の判断

逮捕されると、警察による捜査が行われ、被疑者を釈放しない場合は、48時間以内に検察官に送致しなければなりません。

検察官に送致されると、検察官は、警察が集めた証拠や供述内容を基に、被疑者の身柄の勾留を裁判所に請求するかどうか判断します。

勾留が決まると、最長で20日間身柄を拘束され、検察官は、その間に被疑者を起訴するかどうか判断します。

薬物犯罪の場合、証拠が明確であることが多いため、起訴される可能性も非常に高いといえます。

この段階でも弁護人から適切な弁護方針についてアドバイスを受けることが大切です。

 

2.3. 裁判と判決

検察官が起訴をした場合、裁判所で刑事裁判が行われます。裁判では、検察官が薬物犯罪の罪状を立証し、弁護側はこれに対して反論します。

被疑者が犯罪を行ったことを認めている場合は、弁護人が情状酌量を求め、刑罰の軽減を図ることが一般的です。例えば、初犯である場合や更生の意思があることを示すことにより、懲役刑の軽減や執行猶予付きの判決となることを目指します。

 

3 弁護人の役割

薬物犯罪においても、弁護人の役割は非常に重要です。弁護人がどのように対応するかによって、裁判の結果に大きな影響を与えることがあります。以下では、弁護人の具体的な役割を説明します。

 

3.1. 逮捕後の初動対応

逮捕された直後の段階で、弁護人が早急に介入することは非常に重要です。

弁護人からアドバイスを受けることで、取り調べにおいて、被疑者が不利な供述をしないようにします。

また、勾留がされないよう、検察官や裁判官に働きかけたりするなど、身柄の解放を目指します。

 

3.2. 情状酌量の主張と更生計画の提案

薬物犯罪において、被疑者が犯罪行為を行ったことを認めている場合には、被疑者が更生の意思を示すことが重要です。

弁護人は、被疑者が薬物依存から立ち直るための治療計画や社会復帰のための支援を受けることを裁判所に示し、情状酌量を求めます。これにより、被疑者に対する刑罰が軽減される可能性があります。

さらに、依存治療プログラムやリハビリ施設との連携を図り、被疑者が再犯しないための環境を整えることも弁護人の重要な役割です。

 

3.3. 証拠の精査と反論

薬物犯罪の場合、物的証拠が非常に重要な役割を果たします。

例えば、所持していた薬物や使用した痕跡、採取された尿などが主な証拠となります。弁護人はこれらの証拠について、違法な収集がされていないか検討します。もし違法に収集された証拠があれば、その証拠能力が否定されるよう刑事裁判において主張します。

 

4 弁護士に依頼するメリット

薬物犯罪で逮捕された場合、弁護士に依頼することには、以下のように多くのメリットがあります。

 

4.1. 適切な法的対応

薬物犯罪をはじめ、刑事事件手続きは専門的で理解しづらいことが多く、法的な知識に基づいた対応が重要です。

弁護士に依頼することで、刑事事件手続きの各段階で適切な対応が可能となります。

例えば、不利な供述を防ぐための取り調べ段階でのアドバイスを受けたり、適正な刑事裁判手続きを進めたりすることができます。

 

4.2. 刑罰の軽減を図る

被告人が犯罪行為を行ったことを認めている場合には、弁護士は、被疑者の情状のための弁護活動を行い、刑罰の軽減を求めます。

例えば、初犯である場合や、薬物依存からの更生を目指していることを証明できれば、執行猶予付き判決が言い渡される可能性も高まります。

弁護士が関与することで、裁判所に対して被告人が反省をしていることや社会復帰への努力をしていることを効果的に伝えることができます。

 

4.3. 身柄の解放に向けた活動

勾留されないように検察官や裁判所に働きかける、勾留されてしまった場合には準抗告の申立てをする、起訴後には保釈請求をするといった、身柄の解放を目指した活動も弁護人としての重要な活動の一つです。

薬物犯罪の場合、共犯者がいることも多く、身柄の解放は認められにくいといえますが、所持や使用の態様等によっては、身柄の解放が認められることもあります。

 

4.4. 再犯防止のための支援

薬物犯罪には、薬物への依存症がみられることが多く、根本的な解決には依存症の治療が不可欠です。

弁護士は依存症回復施設での治療を提案するなど、再犯を防ぐための支援をします。弁護士のサポートによって、治療を受けながら社会復帰を目指すことができ、薬物犯罪の再発防止に繋がります。

 

5 典型的な事例の紹介

事例1:覚醒剤の所持による逮捕

Aさんは、覚醒剤を所持していたとして警察に逮捕されました。初犯であったため、Aさんは執行猶予になることを望んでいましたが、覚醒剤の所持という犯罪の重さに不安を感じ、弁護士に相談しました。

弁護士の対応: 弁護士は、Aさんが初犯であること、覚醒剤に対して依存性がなく更生の意思が強いことを裁判所に訴えました。また、Aさんが覚醒剤を購入するに至った背景や、その後の依存症回復施設での治療についても主張しました。

結果: Aさんは、執行猶予付きの判決が言い渡され、刑務所に入ることなく、社会復帰を目指すことができました。弁護士の支援により、Aさんは依存治療を受けるための施設に入所しました。

 

事例2:大麻所持での摘発

Bさんは、友人と一緒に大麻を吸引しているところを警察に摘発されました。Bさんは大麻を所持していたため、大麻取締法違反で逮捕され、家族も動揺していました。

弁護士の対応: 弁護士は、Bさんが社会に与えた影響を深く反省していることを示し、情状弁護を行いました。また、Bさんが今後薬物を使用しないためのリハビリプログラムに参加する意思を示し、裁判所に対して執行猶予付き判決を求めました。

結果: 裁判所はBさんに対して執行猶予付き判決を言い渡し、刑務所への収監を避けることができました。弁護士のサポートにより、Bさんは再犯防止のための治療プログラムに参加することになりました。

 

事例3:MDMAの使用と所持での逮捕

Cさんは、パーティーでMDMAを所持・使用していたとして逮捕されました。Cさんは依存症に陥っており、再犯の可能性が高いと思われることを懸念されていました。

弁護士の対応: 弁護士は、Cさんが薬物依存症の治療を受ける必要があることを主張し、専門の医療機関でのリハビリ治療を提案しました。また、Cさんが自ら薬物を手放す意思を示したことを裁判所に伝え、減刑を求めました。

結果: Cさんには執行猶予付きの判決が言い渡され、即時に専門医療機関での治療を開始しました。再犯防止のための支援にを受けながら、Cさんは依存症からの回復を目指しています。

 

6 まずは弁護士へ相談を

薬物犯罪は、社会に対して重大な影響を与える犯罪であり、厳しい刑罰が科されることも多いです。

しかし、弁護士に依頼することで、刑事事件手続きの各段階で適切な対応を取り、刑罰を軽減するためのサポートを受けることができます。

薬物犯罪を行ってしまった、薬物犯罪でご家族等が逮捕されてしまったという方におかれましては、是非、弁護士法人晴星法律事務所までご相談いただければと思います。

 

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