1.はじめに
「昔の窃盗がバレてしまったけれど、もう時効では?」
「警察が急に来たが、何年も前のことだったのに…」
何年も前に行った窃盗について、「時効」があるからもう安心できるだろうと考えている方も少なくありません。ですが、時効には明確なルールがあり、一定の行為をきっかけに進行が止まることもあります。
この記事では、窃盗罪における「公訴時効」の仕組みと注意点、逮捕された場合の対応、早期に弁護士へ相談することの重要性等について、わかりやすく解説します。
2.窃盗罪の時効はどれくらい?
公訴時効とは?
「時効」には、刑事事件における公訴時効と民事事件における消滅時効があります。
公訴時効(刑事事件):検察官が起訴できる期間の制限
民事上の消滅時効(損害賠償請求など):被害者が請求できる期間の制限
公訴時効は、時効期間の経過により公訴権が消滅し、検察官は起訴をすることができなくなります。
これに対し、民事上の消滅時効は、時効期間の経過により債権が確定的に消滅するのではなく、時効を援用することによってはじめて債権が確定的に消滅します。
本記事で解説するのは、前者の「公訴時効」についてです。
窃盗罪の公訴時効は7年
刑事訴訟法250条2項では、人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪に関する時効について定められており、長期15年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については7年と規定されています。
また、刑法235条では、他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処すると規定されています。
そのため、窃盗罪の公訴時効は7年ということになります。
また、公訴時効の起算点は犯罪行為が終わった時点となるため(刑事訴訟法253条)、窃盗を行ったときから7年が経過すると、公訴時効により、検察官は起訴をすることができなくなります。
3.時効が停止するケースに注意
上記のように、窃盗罪の公訴時効は7年です。
しかし、時効は、当該事件についてした公訴の提起によってその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める(刑事訴訟法254条1項)。共犯の1人に対してした公訴の提起による時効の停止は、他の共犯に対してその効力を有する。この場合において、停止した時効は、当該事件についてした裁判が確定した時からその進行を始める(刑事訴訟法254条2項)と規定されています。
また、犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかった場合には、時効は、その国外にいる期間又は逃げ隠れている期間その進行を停止するとも規定されています(刑事訴訟法255条1項)。
したがって、被疑者が国外に逃亡していたような場合は、時効の進行が停止し、窃盗を行ってから7年が経過しても検察官から起訴をされることがあります。
4.窃盗罪で逮捕された場合どうしたらいい?
逮捕される可能性とは?
窃盗罪は財産犯の中でも比較的軽い犯罪と考えられがちな犯罪かもしれません。しかし、窃盗罪においても、逮捕されるのは珍しいことではありません。店舗などで万引きをして現行犯逮捕されることや、逮捕状によって後日通常逮捕されるということも十分にあり得ます。
特に被害額が高額であったり、逃げようとしたりしている場合には、逮捕される可能性も高くなります。
逮捕されたときの流れ
逮捕
警察に逮捕されると、身柄を拘束され、取り調べ等が行われます。そして、逮捕後48時間以内に、検察官に送致されます。検察官に送致されると、検察官は24時間以内に被疑者を釈放するか勾留を請求するかを決めます。このように、逮捕されると、最長で72時間の間、身柄を拘束されることになります。逮捕されている間は、家族をはじめ弁護士以外の者とは面会をすることができません。
勾留
検察官が裁判所に対して勾留請求をし、裁判所が勾留を認めると、引き続き身柄が拘束されることになります。勾留の期間は10日ですが、さらに10日延長することもできます。接見禁止になっていない場合、勾留中は弁護士以外の者とも面会をすることができますが、弁護士以外の者と面会をする場合は、警察官が立ち会います。
そして、勾留の間に、検察官は起訴をするか釈放するかを決めます。
起訴
起訴をされると、被疑者は被告人となり、刑事裁判手続きが行われます。刑事裁判手続きは公開の法廷で行われますが、公判廷での刑事裁判手続きが行われない略式起訴という手続きもあります。窃盗罪でも被害金額が小さい万引きなどの場合には、略式起訴になることもあります。略式起訴の場合も不起訴処分と異なり、前科はつきます。
不起訴処分
嫌疑がない場合や嫌疑が不十分な場合は不起訴処分となります。また、十分な嫌疑があっても、被害者に対して被害弁償をし、示談が成立しているような場合には、検察官の判断で不起訴処分になることもあります(起訴猶予)。不起訴処分になると前科もつきません。
このように、窃盗罪で逮捕されると、長期間にわたって身柄が拘束され、重い刑罰を科される可能性があります。そのため、窃盗罪で逮捕された場合には、刑事事件に注力している弁護士に相談し、早期の釈放や、不起訴処分、執行猶予付き判決のための活動を早急に行うことが重要といえます。
5.窃盗罪を弁護士に相談するメリット
窃盗罪を弁護士に相談する具体的なメリットは次のとおりです。
示談により不起訴処分を目指すことができる
窃盗行為を行っていることを加害者が認めている場合、加害者が被害者に対して被害弁償をし、示談をすることがあります。
そして、被害者との間で示談が成立している場合には、検察官が不起訴処分にする可能性が高くなります。また、起訴をされている場合でも、執行猶予付き判決が言い渡される可能性も高くなります。
弁護士が間に入ることで、被害者との連絡を円滑に行い、冷静な交渉が可能になることがあります。加害者自身で示談を試みると感情的な対立になり、かえって悪化してしまうこともあります。
早期釈放の可能性が高まる
身柄が拘束されると、会社や学校にも行くことができなくなる等、社会生活にも大きな影響を与えます。しかし、弁護士が迅速に初動対応を行い、家族による身元引受書の作成や、反省文・謝罪文の作成、被害者との示談交渉等をしたうえで、勾留取り消しや保釈請求等を行うと、早期釈放の可能性も高くなります。
前科を避けられる可能性が高まる
略式命令(罰金)や公判廷での裁判で有罪判決を受けると、「前科」がついてしまいます。
しかし、弁護士が早期に弁護活動を行い、起訴をされる前に、被害弁償や示談の成立、被疑者の反省の意思の表明などを行うことができれば、不起訴処分となって前科を回避することができる可能性が高くなります。
6.弁護士法人晴星法律事務所へご相談ください
たとえ少額な万引き等であっても、刑事事件としては重大な意味を持ちます。
被害額の大小にかかわらず、長期間身柄が拘束されたり前科がついたりすれば、就職などの社会生活にも大きな影響を与えます。
弁護士法人晴星法律事務所では、被害者との示談交渉や勾留取り消し・保釈請求をはじめとする、早期の釈放や不起訴処分、執行猶予付き判決などを目指した迅速な刑事弁護活動を行っています。
窃盗事件をはじめ刑事事件でお困りの方におかれましては、刑事事件に注力した弁護士が全力で対応させていただきますので、ぜひ、弁護士法人晴星法律事務所までご相談いただければと思います。