犯罪行為を行ってしまった場合、いつ逮捕されるのかといった不安に苛まれ、自首をしようかどうか迷われる方もおられます。
ここでは、自首をするときの注意点や自首をするメリット・デメリットについて解説します。
1. 自首が成立するためには
自首とは、犯人が捜査機関に自発的に自己の犯罪事実を申告し、その訴追を含む処分を求めることをいいます。自首の要件は次のとおりです。
自発的に自己の犯罪事実を申告すること
自首に該当するためには、自発的に申告をすることが必要です。
捜査機関の取り調べに対して犯罪事実を認めることも、基本的には自発的な申告とは認められませんし、警察官の職務質問に対して、当初は犯罪事実を申告する意思がなく、弁解した後に自供したような場合も自首に該当しないとされています。
もっとも、自首をするために派出所まで行ったところ、警察官から挙動不審者として職務質問を受けて直ちに犯罪事実を申告したような場合は自首と認められることがあります。
また、自己の犯罪事実の申告でなければならないため、他人の犯罪事実について申告した場合には、その事実が事故の犯罪事実と密接な関係にあったため自己が訴追を受けることに結果になったとしても、自主には該当しません。
自己の訴追を含む処分を求めること
自己の訴追を含む処分を求める趣旨が、明示的又は目次的に含まれていることが必要です。
犯罪事実の一部を殊更に隠すものであったり、自己の責任を否定しようとするものであるときは自首に該当しません。
ただし、申告内容の一部に虚偽が含まれていたとしても、犯罪事実を申告したと認められるような場合には自首に該当します。
捜査機関に対して申告をすること
捜査機関とは検察官又は司法警察員をいいます
申告の方法は、口頭又は書面でする必要があり、代理人による自主は認められていません。一方、犯人がいつでも捜査機関の支配内に入る状態を具備している場合であれば、自首の表示の伝達を他人に託すこともできるとされています。
また、本人が代理人とともに捜査機関のところに行って、自己の犯罪事実を申告して自首をすることもできます。
捜査機関に発覚する前の申告であること
犯罪事実が捜査機関に発覚していない段階だけでなく、犯罪事実が発覚しているものの犯人が誰なのか発覚していない段階でも自首に該当し得ます。
これに対し、捜査機関が犯罪事実や犯人を把握しているものの、犯人がどこにいるのか分かっていないという場合は、出頭と呼ばれ、自主には該当しません。
2. 自首をするメリット
刑が軽減される可能性がある
罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首をしたときは、その刑を軽減することができるとされています(刑法42条)。
これは、刑の任意的減軽事由であり、自首をした者の刑を減軽するかどうかは裁判官の裁量に委ねられるということになります。
ただし、特別の規定がある犯罪については、必要的免除、必要的軽減又は免除、必要的軽減、任意的軽減又は免除とされているものもあります。
もっとも、犯罪の情状に酌量すべきものがあるときは、その刑を減軽することができるとされています(刑法66条)。
自首は、反省をしていることを示すものです。情状として考慮される大きな事由の一つであり、刑罰も軽くなる傾向にあります。
そのため、執行猶予が付いたり、懲役の期間が短くなったりする可能性も高くなります。
また、自首をすることで、そもそも検察官から起訴されず、不起訴になる可能性も高まります。
不起訴になった場合は前科もつきません。
前科について詳しく知りたい方は「前科をつけたくない」をご覧ください。
逮捕されるリスクが低くなる
自首をすることで、逮捕をされるリスクが低くなるというメリットもあります。
通常逮捕の要件として、逮捕の理由と逮捕の必要性があり、逮捕の必要性とは、被疑者が逃亡するおそれや罪証を隠滅するおそれの有無で判断されます。
自首は、自発的に自己の犯罪事実を申告する行為ですので、逃亡するおそれや罪証を隠滅するおそれがないことを示す一つの事情となります。
そのため、自首をすることによって、逮捕されることなく、在宅で捜査を受けることができる可能性が高くなります。
職場や家族へ突然連絡されるリスクが低くなる
通常逮捕をされる場合、職場や自宅に警察が来て逮捕されることも珍しくありません。
また、逮捕されない場合でも、突然警察が職場や自宅に来て、事情を聞かれることもあります。
そうなると、職場や家族に犯罪を行ったことが知られてしまうでしょう。また、このような場合、突然仕事を休まなければならなくなり、職場に多大な迷惑をかけることにもなりかねません。
しかし、自首をすることで、連絡先をあらかじめ警察に伝えておくことができます。
その場合、通常、警察からはその連絡先に連絡があります。また、取り調べを受ける日時も、警察から連絡を受けて日程調整をすることができることも多く、職場にかける迷惑を最小限に抑えることもできます。
ただし、自首をすると、在宅事件になる場合でも身元引受人を求められ、家族が身元引受人になると、犯罪行為を行ったことを家族に知られることになります。
犯罪行為を行ったことを家族に知られたくないという場合、後述するように弁護士に依頼するという方法も考えられます。
不安を減らすことができる
犯罪行為を行った場合、いつ逮捕されるのか、職場や自宅に突然警察が来ないだろうかといった不安がつきまといます。
前述のように、自首をすると逮捕されるリスクや、職場や自宅に突然警察が来るリスクが低くなります。それによって、このような不安を減らすことができます。
また、弁護士に同行して自首をしたような場合には、弁護士からも事件の見通しなどについてアドバイスを受けることができるので、心理的な負担をさらに減らすことができるでしょう。
3 自首をするデメリット
犯罪行為を行ったことが発覚する
当然のことですが、自首をすると、犯罪行為を行ったことが捜査機関に発覚します。
捜査機関が捜査を行い、犯罪行為を行ったことが認められると、自首によって不起訴になる可能性が高まるものの、略式起訴や、起訴(公判請求)等の処分がされることももちろんあります。
逮捕されないとは限らない
前述のように、自首をすると逮捕される可能性は低くなります。
しかし、必ずしも逮捕されないとは限りません。特に、重大な事件になると、自首をしたにもかかわらず、逮捕されてしまうこともあります。
もっとも、自首をする場合、突然逮捕される場合と異なり、逮捕されたときに備えてあらかじめ準備をしておくことはできます。
4 弁護士に依頼をすることについて
自首は自分一人で行うことももちろん可能です。
一方、弁護士に依頼をすることで、自首をする際、弁護士に同行してもらうことができます。
弁護士に同行してもらうことで、前述のように事件の見通しなどについてアドバイスを受けることができます。
また、弁護士に身元引受人になってもらうことで、家族に知られないまま刑事事件手続きを進められる可能性もあります。
さらに、自首をした後、そのまま弁護士のサポートを受けることが可能ですので、示談交渉をはじめ、その後の刑事事件手続きに速やかに進めることが可能となります。
弁護士法人晴星法律事務所では、弁護士による自首の同行をはじめ、刑事事件手続きのサポートを行っております。
犯罪行為を行ってしまい、自首をするかどうか迷われている方、自首をしたいと考えておられる方につきましては、是非、ご相談いただければと思います。