器物損壊罪 

器物損壊罪は、駐車場の他人の車両に傷をつけた、駐輪場にある他人の自転車をパンクさせた、他人のペットを逃がしたなど、日常的にも起こりうる犯罪です。

今回は器物損壊罪の内容や、器物損壊罪で逮捕されたときの流れとともに、器物損壊罪における弁護士の活動について説明します。

1.器物損壊罪の内容

器物損壊罪は、他人の物を棄損し、又は傷害した場合に成立します(刑法261条)。

器物損壊罪の客体は、刑法258条~261条に規定するもの以外の他人の物となっているため、建造物や艦船、公用文書や私用文書は客体から除かれます。

「他人の物」には、共有している物も該当しますが、誰のものでもない物は「他人の物」に該当しません。一方、自己のものでも、差押えを受け、物権を負担し、又は賃貸したものを損壊した場合は「他人の物」に該当します。

また、違法な物であっても、他人の物である限り客体となります。例えば、公職選挙法に違反する政党演説告知用ポスターの掲示がされていたとしても、そのポスターを棄損すれば、器物損壊罪にあたります。

「損壊」とは、物の効用を害することをいいます。

物理的な損壊はもちろんのこと、物理的な損壊を伴わない行為、例えば、食器に放尿する行為や盗難・火災予防のために地中に埋設していたドラム缶入りガソリンを発掘した行為、窓ガラスや書棚等に多数のビラを貼付ける行為なども「損壊」に該当します。

また、「傷害」は、客体が動物の場合であり、損壊と同様に物理的な損壊を伴わない行為も含みまれます。他人のペットを殺傷等する行為だけでなく、他人のペットを逃がす行為、水門を開いて飼養中の鯉を養魚池の外へ流出させる行為も該当します。

器物損壊罪は故意で行った行為が処罰の対象となります。過失によって他人の物を損壊してしまった場合には、民事上の損害賠償責任を負うことはあるものの、器物損壊罪は成立しません。

また、器物損壊罪は未遂を処罰する規定もないため、他人の物を壊そうとしたものの、損壊することができなかった場合には、処罰されません。

器物損壊罪の法定刑は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料です。

また、親告罪となっているため、被害者等の告訴がなければ、検察官は起訴をすることができません。

2.器物損壊罪で逮捕されたときの流れ

逮捕

被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときには、裁判官の発する逮捕状により、逮捕することができます。これを通常逮捕といいます。

逮捕には、通常逮捕の他、現に犯罪が行われている又は犯罪を行い終わった直後に逮捕する現行犯逮捕や、一定以上の重大な犯罪において、逮捕状を求める余裕がないときに行われる緊急逮捕がありあます。もっとも、緊急逮捕は、現行犯でもないのに事前に逮捕状を請求することなく行われるものであり、厳格な要件が定められています。

逮捕されると、司法警察員は、48時間以内に被疑者を釈放するか検察官に送致するかを決めます。

検察官に送致した場合、検察官は、24時間以内に被疑者を釈放するか、裁判官に勾留請求するかを決めます。

なお、検察官が被疑者を逮捕した場合には、48時間以内に被疑者を釈放するか、裁判官に勾留請求するかを決めることになります。

このように、逮捕されると、最長で72時間身柄を拘束され、その間は弁護士以外の者と面会をすることはできません。また、逮捕後、勾留されると、身柄の拘束はさらに続くことになります。

一方、犯罪行為を行った場合でも逮捕されず、在宅で捜査をされることもあります。

器物損壊罪の場合、逮捕されず、在宅で捜査をされることも多くあります。

勾留

勾留請求を受けた裁判官は、勾留の理由があると認めると、勾留状を発付します。

勾留されると、検察官は、勾留請求をした日から10日以内に公訴を提起するか釈放するかを決めることになりますが、この期間はさらに10日延長することができます。

そのため、勾留期間は最長で20日にも及びます。

この期間は弁護士以外の者と面会をすることも可能ですが、接見禁止がついていると、面会ができない場合もあります。

起訴

検察官が起訴(公訴請求)をすると、裁判所で刑事裁判手続きが行われます。

刑事裁判手続きでは、まず、人定質問、起訴状朗読、黙秘権の告知、被告人・弁護人の罪状認否といった冒頭手続きが行われます。

その後、冒頭陳述、検察官による立証、被告人・弁護人による立証、被告人質問といった証拠調べ手続きが行われた後、検察官による論告・求刑、弁護人による弁論、被告人の最終陳述といった弁論手続きが行われます。

これらの手続きが終わると、裁判官による判決の宣告が行われます。

被告人が認めている事件では、冒頭手続きから弁論手続きまでは1回の期日で行い、その次の期日で判決の宣告ということもあります。

また、公判廷での刑事裁判手続きを行わない略式起訴という手続きもあります。

略式起訴は、簡易裁判所が管轄する事件について、被疑者にも異議がない場合に、百万円以下の罰金又は科料を課することができます。

略式起訴の場合、身柄が拘束されていても迅速に解放されます。

3.器物損壊罪が成立する場合の主な弁護活動

被害者との示談交渉

前述のように、器物損壊罪は親告罪です。

そのため、被害者と示談し、告訴を取り下げてもらうことが重要になります。

起訴された後でも、示談をすることができれば、情状において大きな事情となるため、刑罰が軽くなることが多いです。しかし、起訴されてしまうと刑事裁判手続きは続きます。そのため、起訴をされる前に示談をして告訴を取り下げてもらうことが大変重要となります。

また、示談をする際には、損壊させた物の修理費用等相当額+αの金額の支払いが必要になるケースも多いです。

もっとも、被害者からすると、加害者とは直接話をしたくないという方も多く、被害者自身が被害者と示談交渉をすることは困難を伴います。また、示談書の記載内容や作成方法もよく分からないという方が多いと思います。そのため、弁護士が加害者に代わって被害者と示談交渉を行い、示談を成立させることも多いです。

身柄の解放

逮捕や勾留が続くと、長期間身柄を拘束されることになり、社会生活に大きな影響を与えます。

このような場合、勾留される前の段階であれば、勾留請求がされないよう検察官に訴えたり、勾留請求がされた場合にそなえて、裁判官に対し、勾留請求がされても勾留決定をしないよう訴えたりします。

また、実際に勾留をされてしまった場合には、準抗告の申立てをすることにより、起訴後には保釈請求をすることにより、身柄の解放を目指します。

いずれの段階でも、示談が成立していると身柄の解放が認められやすくなりますので、早期の示談成立を目指すことになります。

公判廷での活動

被告人が、器物を損壊したことを否認している場合は、被告人が器物を損壊していないことを主張・立証したり、検察官の立証が不十分であることを主張したりします。

これに対し、被告人が認めている場合には、被告人が反省していることや、今後犯罪を行うおそれがないこと、示談をして被害が回復されていることを主張立証するなど、情状に関する弁護活動を行います。

4.弁護士に相談することについて

器物損壊罪では、示談交渉をして、被害者に告訴を取り下げてもらうことが重要ですが、加害者自身で被害者と示談交渉をすることは非常に困難です。また、告訴の取下げは起訴をされる前の段階で早期に行うことに大きな意義があります。

弁護士法人晴星法律事務所では、刑事弁護に注力した弁護士が全力でサポートいたします。器物損壊罪をはじめとする刑事事件手続きでお困りの方は、ぜひ、弁護士法人晴星法律事務所までご相談いただければと思います。

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