1 はじめに
「一時の気の迷いだった」「生活が苦しかった」「取り返せると思っていた」
そうして手を出してしまった会社のお金。
しかし、たとえどのような事情があっても、会社のお金を私的に使用することは横領罪に該当する重大な犯罪です。
今、あなたがこの記事を読まれているのは、「どうすればいいのか分からない」「罪を償いたい」「家族や会社にどう向き合うべきか」――そうした不安や後悔を抱えておられるからではないでしょうか。
本記事では、会社のお金を横領してしまった方がこれから取るべき対応と、弁護士がどのようにサポートできるのかをご説明します。
2 横領罪とは? ― 会社のお金を使い込むことの法的リスク
会社のお金を着服する行為は、刑法上「業務上横領罪」(刑法253条)に該当します。
これは、単なる横領(刑法252条)よりも重く処罰される罪で、10年以下の懲役という重い刑罰が科される可能性があります。
特に次のようなケースでは、実刑判決(刑務所に入る判決)を受けるリスクが高くなります。
- 横領した金額が高額(数百万円~数千万円以上)
- 長期間にわたる繰り返しの犯行
- ギャンブルや浪費など、動機に酌量の余地が少ない場合
- 被害弁済が行われていない、反省の態度が乏しい など
また、会社のお金を横領した場合、会社へ損害の賠償をする民事上の責任も負います。
会社のお金を横領して返済せずにいると、会社から訴訟を提起され、損害の賠償を命じる判決が出されます。それでもなお賠償しない場合、給与や不動産を差し押さえられ、強制執行される可能性もあります。
3 今すぐやるべきことは?
(1)事実関係を整理する
まず、いつ・どのように・いくらの金額を・どのような目的で使用したのか、自分自身の行動をできるだけ正確に振り返り、状況を整理してください。
(2)被害弁償の準備
可能であれば、被害金額の全額または一部でも弁済する意思を示すことが、今後の処分に大きな影響を与えます。
被害弁償の準備があることは、会社側との示談交渉においても前向きな材料になります。
(3)弁護士に相談する
自分一人で対応しようとせず、できるだけ早い段階で刑事事件に詳しい弁護士に相談してください。早期に弁護士に相談することで、適切なアドバイスを貰うことができ、事態の悪化を防ぐことができます。
4 弁護士に相談・依頼するメリットとは?
弁護士が代理人として、会社との示談交渉を行うことができます。
直接会社とやり取りすると、感情的になってしまったり、後々不利になってしまう可能性がある発言をしてしまったりすることがあります。
弁護士が間に入ることで、冷静かつ適切な形で示談交渉を進めることが可能です。
会社との示談が成立し、被害金額の弁償が済んでいる場合、検察官が不起訴処分にする可能性があります。
また、仮に起訴された場合でも、会社との示談が成立していることは有利な情状として考慮されるため、執行猶予付きの判決となることが期待できます。
このように、会社と示談が成立していることは、刑事処分の結果を大きく左右しますので、弁護士が代理人として示談交渉を行うことが大切です。
5 ご相談はお早めに
会社のお金を横領した場合、実刑判決を受けたり民事上の賠償責任を負ったりするなど、重い結果となる可能性があります。
しかし、早期に弁護士に相談し、誠実に被害弁償などの対応をすれば、事態の悪化を防ぐことが可能です。
会社のお金を横領してしまい、「どうしたらいいか分からない」「会社に打ち明けて罪を償いたい」といった悩みを抱えている方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。