社会保険労務士(以下「社労士」)は、企業の労務管理や社会保険手続、助成金の申請などを専門的に扱う国家資格者です。企業の「人」と「お金」に関わる立場上、高い信頼性が求められます。
しかし近年、助成金の不正受給や書類偽造などに関する刑事事件で社労士が逮捕されるケースが報道されています。
本記事では、社労士が逮捕される典型的な事例や、逮捕後の流れ、刑事弁護のポイントについて、刑事事件に強い弁護士がわかりやすく解説します。
増加する助成金の不正受給とは
1 助成金の仕組み
厚生労働省の各種助成金(雇用調整助成金、キャリアアップ助成金など)は、一定の条件を満たす事業主に対して支給される公的資金です。申請にあたっては、雇用契約書や出勤簿、給与台帳などの添付書類が必要であり、社労士が代理申請を担うことも少なくありません。
2 不正受給の典型例
不正受給として問題となるのは、以下のようなケースです。
・実際には雇用していない従業員を雇用しているように装って助成金を申請
・出勤簿や給与明細を偽造して、支給要件を満たしているように見せかける
・休業手当を支払っていないにもかかわらず、雇用調整助成金を申請
・助成金の一部を受給後、従業員に返還させる形で実質的に不正受給していた
こうした行為は、単なる「書類ミス」や「確認不足」では済まされず、詐欺罪(刑法246条)や有印私文書偽造罪(刑法159条)に問われることがあります。
3 不正受給の摘発が増加する背景
新型コロナウイルス感染症の影響で、助成金制度の利用が急増したことを受け、現在、行政機関による調査が強化されています。
特に「架空の雇用」「給与水増し」など悪質なケースでは、社労士本人が刑事責任を問われる例も少なくありません。
不正受給の刑事弁護とは
助成金の申請や処理を日常的に行っている社労士の方にとって、「悪意はなかったのに不正受給とみなされた」というケースは少なくありません。
たとえば、顧問先が提出した書類を信頼して申請した結果、のちに「虚偽記載があった」として刑事責任を問われるという事例も実際にあります。
不正受給の疑いをかけられたときに大切なのは、①どこまでが社労士本人の関与だったのか、②不正の意図があったのかを明確に整理することです。
刑事弁護の目的は、「罪を軽くすること」だけではありません。
社労士にとっては、資格の維持や社会的信用の回復も極めて重要なポイントです。
そのため、弁護士は事件の全体像を丁寧に整理しながら、「どうすれば資格を守り、再出発できるか」という視点で対応方針を立てていきます。
社労士が逮捕された場合の流れ
社労士が逮捕された場合、一般的には以下のような流れで手続きが進みます。
1 逮捕
警察が証拠を押収し、本人を逮捕します。
逮捕後は原則として48時間以内に検察へ送致されます。携帯電話やパソコン、事務所書類が押収されることもあり、業務に大きな支障を及ぼします。
2 勾留
検察が勾留を請求し、裁判官が認めた場合は、逮捕後、最大20日間拘束されることがあります。この間、弁護士以外の者との接見が制限されることも多く、精神的負担が大きくなります。
3 起訴・不起訴の判断
弁護士は勾留中から接見を重ね、取調べへの対応や供述内容の整理を支援します。
不正受給事件では、被害金の返還や反省状況により、起訴猶予となる可能性もあります。
4 裁判・判決
起訴された場合、裁判では主に以下の点が争点となります。
・不正の主導者が誰であったか
・意図的な虚偽申請であったか
・被害金額や返還状況
・再犯防止の見込み
社労士は、社会的信用が高い職業であるため、刑事罰以上に社会的制裁が重くのしかかる点も見逃せません。
しかし、起訴され有罪となった場合でも、初犯であること、被害金額が比較的少ない、被害弁償を積極的に行った、反省が明らかで再犯の可能性が低い、といった情状が揃えば、執行猶予付き判決となる可能性があります。
一方で、悪質な手口や巨額の被害を伴う場合には実刑判決となるケースもあります。
社労士が逮捕されるリスク
社労士が逮捕されるケースは助成金不正だけではありません。主なリスクとして、以下のような事例が考えられます。
1 書類偽造・虚偽申請
社労士が社会保険の資格取得・喪失届、雇用保険の離職票などを代理提出する際、依頼者の要望に応じて実際とは異なる内容を記載した場合には、有印私文書偽造罪に問われることがあります。
また、虚偽の届出や申請によって実際に給付金や補助金などを受け取った場合には、詐欺罪に問われる可能性もあります。
「顧問先から頼まれただけ」という事情があっても、専門家としての確認義務を怠ったと評価されるおそれがあります。
2 個人情報の不正利用
顧問先の従業員情報を無断で使用・改ざんした場合には、個人情報保護法違反や不正アクセス禁止法違反に問われるおそれもあります。
3 横領・背任
顧問先から受け取った助成金の一部を流用した場合、業務上横領罪や背任罪に問われる可能性があります。
特に「還元金」「謝礼金」といった名目で金銭を受け取った場合も、内容によっては不正受給とみなされるリスクがあります。
4 顧問先との共犯関係
顧問先が不正を行い、それを知りながら書類作成や申請に関与した場合、幇助犯や共謀共同正犯として立件される可能性もあります。
職業上の信頼が高いだけに、「気づけたはず」と判断される傾向に注意が必要です。
弁護士ができるサポート
社労士が逮捕・取調べを受けた場合、弁護士の早期関与が極めて重要です。
刑事事件に強い弁護士は、以下のような具体的な支援を行います。
・取調べ対応・供述整理:不利な供述を避け、誤解のない説明を準備
・勾留阻止・保釈申請:身柄拘束の長期化を防ぎ、早期釈放を目指す
・返還・示談交渉の代理:被害金の返還や示談成立を通じて、不起訴・執行猶予を狙う
・資格維持に向けた戦略:社労士資格の取消・停止リスクを最小限に抑える法的対応
弁護士の迅速な介入によって、事件の方向性は大きく変わることがあります。
少しでも不正受給や刑事責任を指摘された場合は、一刻も早く弁護士に相談することが最善の対応です。
社労士が逮捕された場合は弁護士法人晴星法律事務所へご相談ください
社労士が刑事事件で逮捕されると、業務の停止・顧客の離脱・資格の喪失など、人生とキャリアの両面に深刻な影響を及ぼします。
しかし、早期に刑事弁護の専門家に相談することで、事態を大きく変えられる可能性があります。
弁護士法人晴星法律事務所では、以下のサポート内容を強みとしています。
・助成金不正受給事件の弁護経験
・企業法務・行政対応に精通した弁護士体制
・勾留阻止・保釈申請・示談交渉・資格回復支援など一貫したサポート
もしも社労士の方が逮捕・取調べを受けた場合、または不正受給の疑いをかけられている場合は、一人で悩まず、すぐに弁護士法人晴星法律事務所にご相談ください。
初期対応の速さが、今後の結果を大きく左右します。
 
		 
 

