前科をつけたくない

1 日本の有罪率

逮捕されても、前科を付けないようにするためには、起訴されないようにすることが大切です。現在の日本の刑事事件では、一旦起訴されれば、ほぼ確実に有罪と判断されてしまうからです。

実際にも、司法統計年報令和5年度刑事編では、通常第1審の有罪率は95.5%であったことが報告されていることからも、日本の刑事事件における有罪率の高さが窺われるところです。

2 前科によるデメリット

前科がついてしまうと、海外にでる場合、国によっては入国拒否されたり、ビザがないと入国できないなどの制限があったりします。

また、公務員や学校の教員、保育士などの資格・職業には付けません。他にも自身の就職や、親族の就職活動にマイナス評価となってしまうこともあります。

このようなデメリットを回避するためにも、前科を付けないように活動することは重要なのです。

3 前科を回避する方法

前科を回避する方法について、犯罪の成立を争わない場合(いわゆる「認め事件」の場合)と、犯罪の成立を争う場合(否認事件)の場合で対応が異なる部分がありますので、個別に説明していきます。

(1)認め事件

認め事件の場合、犯罪をした事実は争いませんので、前科が付くことを回避するのは難しいようにも見えます。

しかし、刑罰とは、犯罪者の再犯予防のために行われるものですから、刑罰を科さなくとも再犯予防ができると検察官が納得できるだけのものがあれば、起訴を回避できる可能性があります。

検察官を納得させるための材料として、例えば、以下のようなものが考えられます。

①被害弁償をすることにより被害者と示談し、被害者より宥恕文言を獲得している。

②薬物事件において、依存症治療のための療養環境が準備出来ている。

③身近に被疑者を監督できる人がおり(両親など)、その人が被疑者の監督を約束している。

これらの証拠は、当然ながら検察官が起訴処分の決定をするまでに準備し、検察官に提示することが必要です。

ですので、できるだけ早期に弁護活動を開始する必要があり、とにかく早く弁護士に相談していただくことが重要なのです。

(2)否認事件

・否認事件の特徴

事件の犯人ではないのに、犯人の疑いがあるとして逮捕されることはあり得ます。

この場合、犯罪の嫌疑があるのに、被疑者は犯人性を否認しているとして、逮捕後も、勾留という形で身体拘束を継続される可能性が高くなります。また、証拠収集の必要性などを理由として勾留が延長される可能性もあります。

勾留延長までされると、最大23日間にわたって留置所から出られなくなります。

そして、この23日間にわたって継続的に警察官や検察官からの取調べを受けることになるのです。

また、身体拘束中の取調べは、取調室からの退室もできないなかで、延々と、犯人ではないのかという質問を受けるため、心身への負担が非常に大きいものとなります。

このような状況下では、犯罪を認めてしまえば早く留置所から出られるのではないかという考えに至り、事実ではないのに、犯人であることを認める供述をするという心理に陥りやすくなります。

しかし、一度犯罪を認めてしますと、次は、なぜ犯人なのに犯人ではないと嘘をついたのかなどと責め立てられ、結局、反省していないため再犯可能性ありとして起訴され、前科が付くこともあり得ます。

裁判で、取調べ時の自白は嘘でしたと述べて無罪を得ようとしても、自白が嘘であるとは簡単には認めてもらえず、むしろ、法廷で述べた真実に対し、検察官より、法廷での供述と全く矛盾する取調べ時の供述があるとして、被告人の供述はどれも信用性がないと弾劾される可能性まであるのです。

ですので、犯人ではない場合、絶対に認めてはいけないのです。

・黙秘の有効性

では、取調べ時に、警察官や検察官の質問に対し、自分は犯人ではないと反論し続けないといけないのでしょうか。

確かに、被疑者が事実を述べ続けた結果、他に被疑者が犯罪を行った客観的な証拠がないとして、嫌疑不十分で不起訴や処分保留で釈放されることもあります。

しかし、犯人との疑いをかけられているなかで、犯人性を否認することは並大抵の事ではありません。

犯人ではないと反論をする場合、ではこの証拠があるのは何故かなど、被疑者の犯人性を推認させる証拠に対する説明を求められます。

このような証拠のなかには、相当の時間が経過したために、当時の記憶が残っていないものも含まれることがあります。

当然、記憶がない以上、証拠に対する説明できなくなりますが、そうなると自分自身でも犯人ではないという事実に不安を感じ、否認していくことに自信がなくなっていくのです。

このため、否認事件においては黙秘をするということが大切です。

黙秘であれば、質問に回答しないだけですので、反論していくことに比べて、精神的負担も軽くなるからです。

なお、黙秘をすると不利になるのではないかと懸念される方もおられるかもしれませんが、そのようなことはありません。

日本国憲法においては、自白を唯一の証拠として有罪としたり刑罰を科すことはできないと規定されています(憲法38条3項)。

このため、検察官は、客観的な証拠だけでも有罪との立証が可能と言えるだけの準備をして、初めて被疑者の起訴に踏み切ります。

そのため、否認事件においては、検察官に被疑者の供述録取書を与える意味は薄いのです。

仮に、犯人性を否定する供述録取書しかなかったとしても、検察官は、裁判における被告人の反論ポイントを把握し、これを的確に潰す証拠を準備できますので、同様に供述する意味は薄いと言わざるを得ません。

・まとめ

否認事件においても、弁護士によるサポートは重要です。

弁護士との接見を通じて今後の見通しや、黙秘権行使の意味を理解することにより、警察官や検察官による黙秘解除の試みに対抗することができるからです。

また、弁護士を通じて、犯人ではない証拠を積極的に集めていくことも検察官の不起訴判断においては重要です。

そのほかにも、逮捕・勾留により、突然社会から隔絶された状況を少しでも緩和するため、ご家族の状況を伝えたり、外部とのパイプ役となるなど、精神面のサポートも行います。

さいごに

認め事件にせよ、否認事件にせよ、前科を付けないようにするためには、早期に弁護士に相談することが重要です。

皆さん自身の生活を守るためにも、是非、弁護士にご相談ください。

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