子供が犯罪を犯してしまったとき:少年の手続きと弁護人の役割

親にとって、子供が犯罪に関与してしまうことは想像したくない事態です。しかし、万が一そのような状況が現実になった場合、親として適切な対策を取ることが重要です。少年が犯罪を犯してしまった場合、成人とは異なる手続きが進みます。早い段階で弁護人を依頼することで、子供の将来にとって最善の結果を得る可能性が高まります。

この記事では、少年が犯罪を犯した場合の手続きの流れや弁護人の役割について解説します。また、弁護士に依頼するメリットや、典型的な事例も紹介します。親としてどのように対応すべきかを知り、安心して子供をサポートできるようにしましょう。

1. 少年事件の手続きの流れ

少年が犯罪に関与した場合、成人とは異なる「少年事件」として特別な手続きが取られます。ここでは、「少年事件」における手続きの概要を説明します。

なお、「少年」とは20歳に満たない者を言います。

このため民法上の成人に達した人でも、20歳未満であれば少年事件の対象者になります。

ただし、少年法改正により、18歳、19歳の少年については、17歳以下の者とは、一部取扱いが異なるので注意が必要です。

(1) 警察・検察による捜査・逮捕・勾留

犯罪の発生を警察が認識すると捜査が開始されます。

捜査の結果、少年が犯罪を犯した蓋然性が認められると、裁判所より逮捕状が発付され、逮捕されることとなります。

逮捕された場合、48時間以内に警察は、検察官に事件を送致します。

ただし、罰金刑以下の刑に当たる犯罪の嫌疑があるものについては、警察が家庭裁判所に直接送致します(少年法41条)。

事件が検察官に送致されると、検察官は24時間以内に少年を勾留するかどうか判断し、「やむを得ない場合」に限って(少年法43条3項、同48条1項)、裁判所に対し勾留請求を行います。

勾留期間は原則10日間であり,延長請求によりさらに10日間加算されることがあります。

この勾留期間中に、警察官および検察官は、被疑事実についての取調べ等の捜査を行ったうえで、犯罪の嫌疑があると判断される限り、原則として全件家庭裁判所に送致されます(少年法42条1項)。

この際、16歳以上の少年のとき犯した故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪(殺人罪,傷害致死罪など)の事件や、18歳以上の少年のとき犯した死刑,無期又は短期(法定刑の下限)1年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件については、刑事処分を検討するため、原則として、家庭裁判所から検察官に送致されること(これを「逆送」といいます。)となります。

(2)家庭裁判所での調査と審判

家庭裁判所に送致された場合、家庭裁判所の調査官が少年の生活環境や家庭状況、事件の背景などを調査します。調査官は家庭訪問や学校との連携を通じて、少年がどのような生活を送っているかを把握し、裁判官に報告します。

この調査の結果に基づき、裁判官が少年に対して処分を下します。軽微な事件の場合であって要保護性も低い場合には保護観察や指導のみで済むことがありますが、重大な事案の場合や要保護性が高い場合には少年院送致や施設入所といった保護処分が下されることもあり得ます。

なお、ここでいう「要保護性」とは、①犯罪的危険性(少年の性格や環境に照らして将来再非行に陥る危険性があること)、②矯正可能性(保護処分による矯正教育によって再非行の危険性を除去できる可能性)、③保護相当性(保護処分による保護が最も有効かつ適切であること)が認められることをいいます。

そのため、要保護性が高いほど、重い保護処分に付すべき事情があると判断されることになります。

2. 弁護士の役割

少年が犯罪に関与した場合、弁護士の役割は非常に重要です。

少年は法的手続きに不慣れであり、親もどのように対応すればよいか戸惑うことが多いです。弁護士は、少年とその家族をサポートし、適切な対応を取るために重要な役割を果たします。

(1)少年の権利を守る

少年は、法律の知識や手続きに対する理解が不十分なことが多いため、自分の権利を十分に主張することが難しい場合があります。弁護士は少年の代理人として、捜査機関や裁判所での対応を監督し、少年が不当な扱いを受けないように権利を守ります。

特に、少年事件においては、通常の刑事事件と異なり、捜査機関が作成した記録は、すべて家庭裁判所に送致されますので(少年審判規則8条2項)、本来の少年の意図と異なる供述調書等が作成されていても、通常の刑事事件のように伝聞証拠であるから裁判所への提出証拠から排除されたいと主張できません。

このため、本来の意図と異なる供述調書もそのまま裁判官の目に入る可能性があるのです。

ですので、少年の権利を守るために、弁護士を付けることが重要となるのです。

弁護士は、少年との接見を通して,黙秘権や供述調書の訂正申立権の説明するとともに、捜査機関による取り調べの際に適切な質問が行われているか、不当な圧力がかかっていないか(例えば、大声で怒鳴ったり、机を叩いて少年を畏怖させるような取調べが行われていないか)の等を確認し、必要によっては準抗告等を行うことによって少年の立場を守ります。

(2)調査や審判におけるサポート

家庭裁判所での調査や審判の場で、弁護士は少年の立場を代弁し、適切な処分を求めます。少年が事件を反省し、家庭や社会でどのように更生できるかを示すことで、家庭裁判所において少年にとって最も適切な処遇を求めることが弁護士の役割です。

このために、弁護士は、少年の意思を尊重しながら、再非行に至らないための適切な処遇を検討し、その処遇に合わせた環境調整を行うことによって、少年の要保護性の低下を図ります。

例えば、少年が社会内処遇を望んでいるが、不良交友による再非行が懸念される事案であれば、少年が不良交友断絶のため、当該交友がもたれていた地域から離れた居住先を探したりします。

また、仮に少年に不良交友を断絶するための対人能力が欠けているために再非行が懸念される場合には、むしろ少年院に行くことで、ソーシャルスキルトレーニングを受け、不良交友の中止が出来るのではないかを検討していくことになります。

そのほか、家族との折り合いが悪く家庭に居場所がないことが非行の要因となっていれば、少年と両親との間を取り持つことによって家庭環境の修復を図ったり、修復困難であれば家庭に代わる居場所を探すこともあります。

このような環境調整は、家庭裁判所調査官と協力して行うことも多いです。

このように、弁護士は、少年の環境や過去の行動に基づいて、少年の環境調整を行い、必要に応じて調査官とも協力しながら少年の要保護性の低下を図り、家庭裁判所が少年の更生のための適切な処遇を判断することを求めていくのです。

(3)被害者との示談交渉

もし、事件に被害者がいる場合、弁護士は被害者対応をすることができます。少年の内省に基づく被害者への謝罪を促し、適切な補償を行うことで、事件を円満に解決し、家庭裁判所での処分に良い影響を与えることができるのです。

この点、通常の刑事事件であれば、被害弁償をしたことそのものが、法益侵害を一定程度回復させたという点で量刑上被告人に有利な事情として考慮されますが、少年事件においては、ただ被害弁償をしたというだけでは、要保護性を低下させる事情とはなりません。

例えば、少年が、自らの非行と向き合っておらず、内省が促されていないのに、少年の家族が被害弁償をしたとしても、少年の内容が促されていない以上、要保護性を減じる事情として裁判所は扱わないのです。

このため、少年事件においては、形だけの被害弁償をするのではなく、少年自身の真の反省と謝罪の気持ちを十分に引き出し、それに基づく被害者対応をすることが重要となってくるのです。

また、示談交渉においても、弁護士が介入すれば、単純な金額交渉ではなく、各種援助制度や弁護士会の相談窓口を紹介することで、被害者に対する配慮をしながらの示談交渉をすることが可能です。

このように、弁護士が介入することで、少年自身の内容を促しながら、被害者との感情的対立も避けつつ、示談がスムーズに進めることができます。

3. 弁護士に依頼するメリット

少年が犯罪を犯してしまった場合、上記2記載のとおり、少年事件における弁護士の役割は非常に重要なことから、弁護士を依頼するか否かは、少年事件の結果に対し重大な影響を与えます。

弁護士に依頼していれば、上記2記載のような被害者との示談交渉や、少年の内省の促進、少年の権利保護といった様々なメリットを享受することができます。

このようなメリットの享受によって、親が法律に不慣れで、どのように対応すればよいか分からない場合でも、少年の将来を守ることが可能となるのです。

(1)早期の問題解決

弁護士が早い段階で介入することで、手続きを迅速に進めることが可能です。

また、少年に対する身体拘束の阻止や、身体拘束の早期解放のために必要な対応を取ることで、少年に対する身体拘束を必要最小限に抑え、通常の生活に与える影響を最小限に図ることもできます。

そのうえ、被害者がいる場合には、早期に示談交渉を進めることで、被害感情の悪化を阻止し、場合によっては被害者からの宥恕を得ることも可能です。

(2)将来への影響を最小限に抑える

少年事件における処分は、少年の将来に大きな影響を与えます。

特に、少年院への収容処分となると、在籍していた学校は停学ないし退学とならざるを得ないでしょうし、職場も解雇ないし辞職する可能性が高いです。

そのため、弁護士は、少年が適切な処分を受けるように家庭裁判所で働きかけ、過度に厳しい処罰を避けるための努力を行いますし、仮に収容処分のような重い処分が検討される場合にも、再入学先の事前準備など退院に備えた環境調整を行うことによって、少年の将来への影響を最小限に抑えるのです。

5. まとめ

少年が犯罪を犯してしまった場合、親としての不安や戸惑いは大きいものです。しかし、早い段階で弁護士に相談し、適切な対応を取ることで、少年の将来に対するリスクを最小限に抑えることができます。弁護士は少年の権利を守り、調査や審判の場で適切な処遇を求める役割を果たし、家庭裁判所や捜査機関との手続きをスムーズに進めるためのサポートを提供します。

また、少年が再犯しないよう、家庭や学校との連携を通じたサポートも重要です。

弁護士の介入は、事件の早期解決と少年の内省に資するのです。

もしお子様が犯罪に関与してしまった場合は、まずは専門の弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けることが最善の対応です。弁護士のサポートにより、子供の将来を守るための最適な手段を講じることができるでしょう。

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