刑事事件で逮捕されてしまった、家族・知人が逮捕されてしまったという場合、弁護士に依頼して身柄の解放や示談交渉、公判期日での対応等のサポートを受けることができます。
刑事事件の依頼を受けて被疑者や被告人の弁護活動を行う弁護士のことを弁護人といい、弁護人には、国選弁護人と私選弁護人がいます。
以下、国選弁護人と私選弁護人の違いについて説明します。
法律上、「被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により、被告人のため弁護人を附しなければならない。」(刑事訴訟法第36条)
「この法律により弁護人を要する場合を除いて、その資力が基準額(標準的な必要生計費を勘案して一般に弁護人の報酬及び費用を賄うに足りる額として政令で定める額をいう。以下同じ。)以上である被告人が第36条の請求をするには、あらかじめ、その請求をする裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に第31条の2第1項の申出をしていなければならない。」(刑事訴訟法第36条の3)
と規定されています。ここにおける基準額は50万円です(刑事訴訟法第36条の2の資産及び同法第36条の3第1項の基準額を定める政令)。
このように、被告人が国選弁護人を選任することができるのは、被告人が資力要件を満たしている場合や、私選弁護人選任の申出をしたものの弁護士が選任申込を拒絶した場合、必要的弁護事件の場合です。被告人段階における国選弁護制度を被告人国選弁護制度といいます。
なお、被告人となるのは起訴された以降です。
一方、起訴される前の被疑者段階においても、勾留状が発せられている場合において、貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、請求により国選弁護人が選任されます(刑事訴訟法第37条の2)。
被疑者段階における国選弁護制度を被疑者国選弁護制度といいます。
国選弁護人と私選弁護人のどちらがいいのかと悩まれる方も多いです。
国選弁護人でも私選弁護人でも、選任された後に弁護人が行うことができる職務の内容に違いはありません。
しかし、国選弁護人と私選弁護人では、以下のような違いがあります。
弁護人を選べるかどうかについて
国選弁護人は、国選弁護人として登録された名簿の中から機械的に選任されます。
そのため、被疑者や被告人が自分で弁護士を選ぶことができるわけではありません。
刑事事件の経験が豊富な弁護士とは限りませんし、話しやすい弁護士が選任されるとも限りません。
また、国選弁護人の場合、自由に解任することはできません。国選弁護人を解任することができるのは、裁判所や裁判官であり、解任ができるのも次の5つの場合に限られています。
①私選弁護人が選任されたことその他の事由により弁護人を付する必要がなくなったとき。
②被告人と弁護人との利益が相反する状況にあり弁護人にその職務を継続させることが相当ではないとき。
③心身の故障その他の事由により、弁護人が職務を行うことができず、又は職務を行うことが困難となったとき。
④弁護人がその任務に著しく反したことによりその職務を継続させることが相当でないとき。
⑤弁護人に対する暴行、脅迫その他被告人の責めに帰すべき事由により弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。
なお、私選弁護人が選任されたこと以外の理由で国選弁護人の解任が認められることはほとんどありません。
これに対し、私選弁護人は、被疑者や被告人が自分で選ぶことができます。直接弁護士と話をして、刑事事件の経験が豊富かどうか、話をしやすいか等を吟味したうえで、刑事弁護を依頼することができます。
また、私選弁護人を解任することに制限はありません。
選任できる時期について
国選弁護人の場合、勾留された後や起訴された後に選任されます。そのため、身柄を拘束されていない在宅事件の場合や、逮捕後勾留されるまでの間は選任されません。なお、逮捕された段階でも、当番弁護士に一度だけ接見してもらい、アドバイスを受けることはできます。
これに対し、私選弁護人は選任できる時期に制限はありません。身柄を拘束されていない在宅事件でも選任することができますし、逮捕された直後でも選任することができます。もちろん、勾留や起訴をされた後でも選任することができます。
在宅事件では、被害者と示談することで、不起訴処分になることも珍しくありません。
また、私選弁護人の場合、逮捕された段階で勾留されないように働きかけることもできます。勾留されると、長期間の身柄拘束が続き、社会生活への影響も大きいため、逮捕段階で勾留されないように働きかけることは重要です。
- まずは弁護士に相談を
国選弁護人と私選弁護人とでは、選任後に行うことができる活動に違いはありません。
しかし、身柄が拘束されない在宅事件や逮捕後勾留前の段階で接見以上の活動をするためには、私選弁護人を選任することが必要です。
特に、在宅事件での示談交渉や、勾留をされないための働きかけを行う意義は非常に大きいといえます。
また、私選弁護人であれば、選任前に直接弁護士と話をし、自分で弁護士を選ぶことができます。
弁護士法人晴星法律事務所では、刑事事件に注力した弁護士が全力で対応いたしますので、刑事事件の加害者となられた方やご家族などが逮捕された方をはじめ、刑事事件でお困りの方につきましては、ぜひ弁護士法人晴星法律事務所までご相談いただければと思います。