はじめに
「お酒を飲んでから運転してはいけない」というのは誰もが知っているルールです。しかし、実際には「大丈夫だと思った」「そんなに酔っていないと思った」といった軽い気持ちで運転し、飲酒運転として検挙される事例が後を絶ちません。
そして近年では、「前日の夜に深酒をして、翌朝に運転した結果、検問や事故で酒気帯び運転と判断された」というケースも多く見られます。このように本人に悪気がなくても、アルコールが身体に残っている限り、飲酒運転として処罰される可能性があります。
本記事では、飲酒運転の基本的な罪の構造に加えて、“翌朝の「酒気残り運転」”のリスクや、それにより検挙された場合にどう対応すべきかを解説します。
飲酒運転の法的分類
飲酒運転は、道路交通法により厳しく取り締まられています。具体的には、以下の2つの区分があります。
酒気帯び運転
アルコールの影響が残っている状態での運転です。基準は以下のとおりです。
- 呼気中アルコール濃度:0.15mg/L以上
- 血中アルコール濃度:0.3mg/mL以上
【法定刑】
- 3年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 違反点数13点 → 一発で免許停止(90日以上)
多くの人がこの基準を超えるのは「飲んだ直後」だけだと思いがちですが、体質や飲酒量によっては12時間以上経っても基準値を下回らないケースもあり、翌朝の運転でも検挙されることがあります。
酒酔い運転
こちらは、数値に関係なく、アルコールの影響で正常な運転ができない状態での運転を指します。たとえば、ふらつき、ろれつが回らない、言動が不自然といった具体的な症状が警察官により認定された場合に適用されます。
【法定刑】
- 5年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 違反点数35点 → 免許取消(欠格期間3年~)
「前日の飲酒」で翌朝に検挙される例
実際の弁護士業務の中でもよくある相談のひとつが、「前日の夜に飲みすぎた翌朝」に運転して検挙されたケースです。
典型的な事例:
- 前日の午後9時から深夜1時まで飲酒
- 翌朝7時に車で通勤
- 通勤途中に軽微な接触事故
- 警察が現場に到着し呼気検査を実施 → 0.25mg/Lの数値で酒気帯び運転に該当
- その場で現行犯逮捕、あるいは後日呼び出しを受けて取り調べ
本人には「飲酒運転をした」という認識がないことも多く、「まさか捕まるとは思わなかった」「酔いは完全に醒めていると思った」というケースが少なくありません。
しかしながら、アルコールが身体に残っていた事実がある限り、飲酒運転は成立するのです。
飲酒運転で人が死傷した場合にはさらに重罪
平成26年5月20日に,「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(略称:自動車運転死傷処罰法)」施行され,アルコール等の影響の発覚を免れる行為をした場合にも拡張して罰則が規定されるなど,より厳格なものとなりましたので,以下紹介します。
第2条(危険運転致死傷罪)
今までの危険運転致死傷罪に「通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」(8号)を新たに追加して刑法から本法律に移行
量刑
致死:1年以上の有期懲役
致傷:15年以下の懲役)
第3条(危険運転致死傷罪)
アルコールや薬物、一定の病気(※2)の影響により、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」で事故を起こした場合の罰則を新設(第3条)
量刑
致死:15年以下の懲役
致傷:12年以下の懲役
第4条(過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪)
アルコールや薬物の影響により死傷事故を起こした者が、その場から逃走してアルコールや薬物が体内から抜けるのを待つ、事故後にさらに飲酒する、大量に水等を飲んでアルコール濃度の減少を図るなど、そのアルコール等の影響や程度の発覚を免れる行為をした場合の罰則
量刑:12年以下の懲役
第5条(過失運転致死傷罪)
従来の「自動車運転過失致死傷罪」を名称変更して刑法から本法律に移行
量刑:7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金
第6条(無免許運転による加重規定)
無免許運転で事故を起こした場合は、上記に加重した法定刑とする規定を新設
量刑
第2条(危険運転致死傷罪)の場合(第3号を除く。)
人を負傷させた場合6月以上の有期懲役
第3条(危険運転致死傷罪)の場合
人を負傷させた場合15年以下の懲役
人を死亡させた場合6月以上の有期懲役
第4条(過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪)の場合
15年以下の懲役
第5条(過失運転致死傷罪)
10年以下の懲役
飲酒をして車を運転していた場合あるいは,前日のお酒が残った状態で車を運転していた場合には,「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為」(第2条1号)または,「アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥」った(第3条)場合として,重罰が科されるおそれがあります。
また,アルコールの免れる目的で,現場から逃走するなどした場合においても,同第4条によって処罰される可能性があります。
飲酒運転で逮捕された場合の流れ
飲酒運転が発覚した場合、多くは以下のような流れになります。
- 現行犯逮捕または後日逮捕・出頭要請
- 警察での取調べ(48時間以内)
- 検察官に送致(身柄付きの場合は勾留請求)
- 勾留決定 → 最大20日間身柄拘束
- 起訴または不起訴の決定
- 略式命令(罰金)または正式裁判へ
逮捕されるかどうか、起訴されるかどうかは、飲酒の程度や事故の有無、過去の違反歴などにより大きく左右されます。
弁護士に相談すべき5つの理由
飲酒運転で検挙された場合、早期の弁護士相談が処分の軽減や前科回避に繋がる可能性があります。
1.法的リスクの整理ができる
飲酒運転が成立するか、どの程度の刑罰が予想されるかなど、事案ごとのリスクを整理し、見通しを立てることができます。
2.警察・検察への対応をアドバイスしてもらえる
供述の内容によっては処分が重くなることもあるため、取調べ前に弁護士の助言を受けることで適切な対応が可能になります。
3.早期釈放・不起訴処分の実現
初犯で反省の態度がある場合や、情状弁護が適切に行われた場合には、不起訴処分や罰金での処理となる可能性があります。
4.示談交渉の支援
人身事故となっている場合には被害者との示談が重要です。弁護士が代理人として介入することで、感情的対立を避け、公平な条件で交渉を進められます。
5.裁判対応・情状弁護
正式裁判になった場合でも、反省文や家族の支援、再発防止策の提示などを通じて、刑罰の軽減を目指すことができます。
社会的信用への影響も大きい
飲酒運転での検挙が職場に知られれば、懲戒処分や解雇となることもあります。また、医師や教員、公務員、会社役員などは、資格や職業上の不利益を受けるリスクも高くなります。
特に飲酒運転は社会的非難が強い犯罪であるため、処分の内容以上に、その後の人生に大きな影響を及ぼします。
弁護士法人晴星法律事務所では、飲酒運転のご相談を随時受け付けています
当事務所では、飲酒運転の逮捕後の対応、被害者との示談、裁判対応まで一貫してサポートしています。ご本人の反省の気持ちを伝え、再発防止策を講じることで、できる限り寛大な処分を目指します。
- 「前日の飲酒が原因で捕まってしまった」
- 「事故を起こしてしまい相手と示談したい」
- 「家族が飲酒運転で逮捕されてしまった」
このようなお悩みをお持ちの方は、まずはお電話またはお問い合わせフォームよりご相談ください。初回相談は無料です。
まとめ
飲酒運転は、事故の有無にかかわらず、重大な犯罪として処罰される行為です。特に、「翌朝の運転だから大丈夫」と思っていても、アルコールが残っていれば酒気帯び運転と判断される可能性があるという点は、多くの方が見落としがちです。
検挙された場合には、できるだけ早期に弁護士に相談し、今後の対応方針を立てることが、自分自身の将来を守る第一歩になります。
飲酒運転でお困りの方は、ぜひ弁護士法人晴星法律事務所までご相談ください。