交通事故を起こしてしまったとき、多くの方が「自分は逮捕されるのだろうか」「前科がついてしまうのだろうか」と、不安に思われます。
突然の出来事で気が動転し、これからどうなるのか見当もつかないという方も少なくないでしょう。
実は、交通事故を起こしたからといって、必ずしも刑事裁判にかけられ、有罪判決を受けるわけではありません。
事故の内容や事故後の対応によっては「不起訴」となり、前科がつかずに済むケースも数多くあります。
この記事では、交通事故で不起訴になりやすいケースや、死亡事故でも不起訴になる可能性、そして不起訴を目指すために今すぐできることを、刑事事件に強い弁護士が分かりやすく解説します。
交通事故で不起訴になりやすい場合
1 そもそも「不起訴」とはどういう意味か
「不起訴」とは、検察官が捜査の結果を踏まえて「刑事裁判にかけない」と判断することを指します。
日本の刑事手続きでは、警察が捜査をしたあと事件を検察官に送り(これを「送致」といいます)、最終的に起訴するかどうかを検察官が決定します。
このとき、検察官が起訴しないと判断すれば、裁判は開かれず、前科もつきません。この、検察官が起訴しないという判断をすることを不起訴といいます。
2 不起訴になりやすい具体的なケース
交通事故のなかでも、次のような事情がある場合には、不起訴となる可能性が高くなります。
物損事故で、けが人が出ていない場合
人の生命や身体に被害が及んでいない物損事故は、そもそも刑事罰の対象となっていません。
悪質な当て逃げや、故意による物損事故でもない限り、起訴されることはありません。
被害者のけがが軽く、示談が成立している場合
たとえば、軽い追突事故などで、被害者のケガが軽度のむち打ち症などにとどまるケースでは、治療費や慰謝料についてきちんと示談が成立し、被害者から「処罰を望まない」という宥恕(ゆうじょ)を得ることができれば、多くの場合で不起訴となります。
事故の原因における加害者の過失が小さい場合
被害者側が信号無視や飛び出しをしていたなど、事故の主な原因が相手側にあると評価される場合には、加害者の過失の程度が軽いと判断され、不起訴となる可能性が高いといえます。
初めての事故で、深く反省している場合
過去に交通違反や事故の前歴がなく、事故後すぐに被害者への謝罪や救護、警察への通報など誠実な対応をしていた場合は、検察官の心証も良くなり、不起訴の判断につながりやすくなります。
このように、不起訴になるかどうかは「事故の重さ」だけでなく、「事故後にどう対応したか」が大きく影響します。
死亡事故でも不起訴になる場合はあるのか
1 死亡事故で問われる罪とは
交通事故で被害者が亡くなってしまった場合、加害者には主に「過失運転致死罪」(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)が適用されます。これは、不注意によって人を死亡させてしまった場合に問われる罪で、法定刑は7年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金と定められています。飲酒や著しいスピード違反などが背景にある場合は、より重い「危険運転致死罪」が適用されることもあります。
死亡事故と聞くと「絶対に起訴されて実刑になるのでは」と思われがちです。
確かに、死亡事故は起訴されてしまう可能性が高いですが、実際には不起訴となるケースもあります。
2 死亡事故でも不起訴になり得るケース
死亡事故であっても、次のような事情があれば不起訴となる可能性が残されています。
被害者側にも大きな過失があった場合
被害者が夜間に人通りのない道路の真ん中を歩いていた、横断禁止の場所を急に飛び出したなど、被害者側の落ち度が事故の主要な原因と評価される場合には、加害者の過失が低いと判断され、不起訴となる余地があります。
遺族との示談が成立し、宥恕が得られている場合
誠実に謝罪を重ね、適正な賠償を行ったうえで遺族との間に示談が成立し、遺族が「加害者の処罰を望まない」との宥恕意思を示している場合、検察官の判断に大きなプラスの材料となります。
もちろん、命が失われたという事実の重さから、示談が成立していても起訴される可能性は高いですが、実務上、こうした事情が不起訴に結びついた例は存在します。
事故の悪質性が低く、加害者に前科前歴がない場合
飲酒や無免許運転、著しい速度超過などの悪質な事情がなく、一瞬の不注意による事故であり、加害者が真摯に反省している場合は、情状面が考慮されることがあります。
ただし、死亡事故は被害の重大性から、不起訴の壁は物損事故や軽傷事故に比べて格段に高いのが実情です。だからこそ、早い段階から弁護士のサポートを受け、できる限りの対応を尽くすことが重要になります。
交通事故で不起訴になるためのポイント
不起訴を目指すためには、次のようなポイントを押さえて行動することが大切です。
1 被害者との示談交渉を早期に進める
不起訴の判断において、被害者との示談成立、特に被害者から宥恕を得ることは非常に重要です。
検察官が起訴・不起訴を決めるまでの期間は限られているため、示談交渉はできるだけ早く始める必要があります。
加害者本人が直接被害者と連絡を取ろうとすると、かえって感情的な対立を招いてしまうこともあるため、弁護士が代理人として冷静に交渉を進めることが望ましいでしょう。
2 反省の態度を具体的な行動で示す
「反省しています」と口で言うだけでは検察官の判断に影響を与えることはできません。
口だけではなく、被害者への謝罪、治療費や休業補償の支払い、任意保険への速やかな連絡、事故後の誠実な対応、捜査への誠実な協力など、具体的な行動を示すことが求められます。
3 弁護士による意見書の提出
弁護士は、事故の状況や被害者との示談成立、加害者の反省状況などをまとめ、不起訴とすることが相当であるという意見を検察官に示す「意見書」を検察官に提出できます。
これにより、検察官に対して不起訴が相当であることを法的な根拠とともに説明することができ、判断に良い影響を与える可能性があります。
4 有利な情状証拠を集める
前科前歴や過去の交通違反歴がないこと、家庭での生活態度や勤務先における勤務態度が良好であること、更生・再犯防止に向けた具体的な取り組みを行っていること(安全運転講習を受講している、免許証を返納している)など、加害者にとって有利になる情状証拠を集めることも、不起訴を目指すうえで欠かせません。
交通事故で弁護士に相談するタイミング
「弁護士に相談するのは、起訴されてからでいいのでは」と考える方もいますが、これは大きな誤解です。
なぜなら、一度起訴されてしまうと、基本的には刑事裁判が開かれてしまうからです。
裁判になれば、事故の事実自体に争いがあるという状況でもない限り、前科がついてしまいます。不起訴を目指すのであれば、できるだけ早いタイミングでの相談が何よりも重要になります。
1 事故直後〜警察の捜査段階
事故を起こした直後から、警察による取り調べは始まります。この段階での供述や対応が、その後の処分に大きく影響することもあります。そのため、事故を起こした直後から、早期の相談をすることが望ましいです。
2 事件が検察官に送致される前後
事件が警察から検察官に送られる送致のタイミングは、不起訴に向けた活動を本格化させる重要な節目です。
検察官が起訴・不起訴の判断をする前に、不起訴の決定をするための判断材料を準備するためには、遅くともこの段階から示談交渉などの活動を始めることが重要です。
3 起訴・不起訴が決まる直前
検察官が最終判断を下す直前まで、示談成立などの事情が考慮される可能性があります。
「もう手遅れかもしれない」と諦めず、少しでも早く弁護士に相談することが、結果を左右する分かれ道になります。
交通事故で不起訴にするために弁護士に依頼するメリット
1 示談交渉をスムーズに進められる
弁護士が間に入ることで、感情的な対立を避けながら、適正な賠償額での示談成立を目指すことができます。実際、被害者側も、加害者本人よりも弁護士を通じたやり取りの方が冷静に応じやすいという傾向があると言えます。
2 検察官に対して効果的な働きかけができる
弁護士は、法律の専門知識と実務経験をもとに、検察官に対してどのような事情を、どのタイミングで、どのように伝えれば不起訴につながりやすいかを熟知しています。個人で対応するのとは、説得力が大きく異なります。
3 精神的な負担を大きく軽減できる
事故を起こしてしまった直後は、強い不安や自責の念で冷静な判断が難しくなるものです。専門家である弁護士が味方についているという安心感は、精神的な面でも、加害者本人にとって大きな支えとなります。
交通事故についてお悩みの方は刑事事件に強い弁護士へご相談ください
交通事故は、誰にでも起こりうる出来事です。しかし、いざ自分が加害者の立場になってしまうと、その後どう対応すればよいのか分からず、一人で悩みを抱え込んでしまう方が少なくありません。
この記事でご紹介したとおり、交通事故の不起訴を目指すためには「早期の示談交渉」「誠実な謝罪や反省」「検察官への働きかけ」が欠かせません。
そして、これらを的確に進めるためには、刑事事件の実務に精通した弁護士の存在が大きな力になります。
当事務所では、交通事故に関する刑事事件を数多く取り扱ってきた弁護士が、事故直後の初期対応から示談交渉、検察官への意見書提出まで、一貫してサポートいたします。
「不起訴の可能性はあるのか知りたい」「今すぐ何をすればいいのか分からない」という段階でも構いません。
一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。少しでも早いご相談が、より良い結果につながる第一歩です。

